生活保護改正案参議院付帯決議等

こんにちは。
 
前回のブログの記事で、生活保護法改正案が参議院を通過したことを述べました。
ただ、審議の中で、
厚労省が、一部自治体で行われている扶養義務に関する運用が誤っていることを認めました。
そして、各自治体に、扶養義務は要件ではないとの旨の通知を出しました。
 
現在の生活保護改正案は、扶養義務強化の文言が法律案にのっています。
なので、扶養義務が「要件」でない(「優先」ではあるけど)と各自治体に釘をさした厚労省の通知は、意義あるものと思います。
また、稼働能力の活用をめぐって争われた岸和田裁判は原告勝利のかたちになりました。
30代男性に対して稼働能力を活用しきれてないとして、生活保護申請を却下し続けた岸和田市の福祉事務所の対応が違法であったことになります。
これも、現在の就労強化(強制)の改悪とは逆の、望ましい動きです。
今のタイミングで、意義ある判決と思います。
 
あと、改正案は残念ながら参議院を通過しましたが、
運動側の主張に配慮した付帯決議も採択されました。
 
「いわゆる「水際作戦」はあってはならないことを、地方自治体に周知徹底すること。」
「相談窓口の対応等について実態調査を行うとともに、申請権侵害が疑われる事案が生じた場合に、不服のある相談者等が相談できる機関を設置する」
「五年後の見直しに際しては、生活保護受給者数、人口比受給率、生活保護の捕捉率、餓死・孤立死などの問題事例等の動向を踏まえ、生活保護受給者、これを支援する団体、貧困問題に関し優れた見識を有する者等、関係者の意見を十分に聴取」
などの重要なポイントが述べられています。
一読に値する付帯決議と思います。
下に転載します。
 
生活保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

平成二十五年十一月十二日
参議院厚生労働委員会

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一、生活保護制度は、憲法二十五条が規定した「健康で文化的な最低限度の生活」を全ての国民に保障するための最後の砦であり、本法に基づいて保護が必要な国民に確実に保護を実施する必要があることから、本法の施行を機に、制度の意義や必要性、相談窓口の所在や申請の方法等について改めて国民への周知を図り、国民全体の理解を得るよう努めること。

二、申請権侵害の事案が発生することのないよう、申請行為は非要式行為であり、障害等で文字を書くことが困難な者等が口頭で申請することも認められるというこれまでの取扱いや、要否判定に必要な資料の提出は可能な範囲で保護決定までの間に行うというこれまでの取扱いに今後とも変更がないことについて、省令、通達等に明記の上、周知するとともに、いわゆる「水際作戦」はあってはならないことを、地方自治体に周知徹底すること。

三、生活保護制度の説明資料、申請書等について、保護の相談窓口に常時配備するなど、相談窓口における適切な対応について指導を徹底すること。また、相談窓口の対応等について実態調査を行うとともに、申請権侵害が疑われる事案が生じた場合に、不服のある相談者等が相談できる機関を設置するなど、制度のより適正な運営に向けた相談体制の在り方について検討すること。

四、扶養義務者に対する調査、通知等に当たっては、扶養義務の履行が要保護認定の前提や要件とはならないことを明確にするとともに、事前に要保護者との家族関係、家族の状況等を十分に把握し、要保護者が申請を躊躇したり、その家族関係の悪化を来したりすることのないよう、十分配慮すること。

五、生活保護受給者に対して就労による自立を促す際には、十分な相談・聞き取りを行い、被保護者の納得と理解を確認するなど、適切な指導を行うこと。また、就労自立給付金の支給に当たっては、就労による自立のインセンティブ付与と、被保護者の自立後の生活の安定に資するという二つの観点から、対象範囲を適正に設定し、必要な給付が行われるよう制度設計を行うこと。

六、生活保護制度の実施体制については、受給者数が急増していることや、個々人の異なる状況に時間をかけて密接に対応していく必要があることから、地方自治体に対する地方交付税措置を改善し、地方自治体におけるケースワーカー、就労支援員などの増員を図る等により、適正な配置を確保すること。

七、五年後の見直しに際しては、生活保護受給者数、人口比受給率、生活保護の捕捉率、餓死・孤立死などの問題事例等の動向を踏まえ、生活保護受給者、これを支援する団体、貧困問題に関し優れた見識を有する者等、関係者の意見を十分に聴取した上で、必要な改正を行うこと。

右決議する。