京都府北部で、差別解消法と自立生活について講演してきました

2016年6月29日(水)第30回人権啓発京都府集会が
京都府北部にある福知山市厚生会館にて開催されました。
その中でJCIL本体は、
差別解消法に関する寸劇などのご依頼を受け、披露させていただきました。


――― 午前 ―――

まず午前中は、民谷渉弁護士による「障害者差別解消法について」
この法律の内容を詳しくお話しされました。
その中で、抽象的な法律から分かりやすい具体例を挙げるために、
障害当事者を中心に結成されたJCIL劇団が、
実際にあった2つの差別事例を演じました。

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● 「バスに乗りたい」

車いすの障害当事者が、思い立ってとある動物園へバスで行ってみようとした。
来たバスは、昇降口が階段で車いすでは乗れず、
運転手さんが営業所へ電話したら、所長さんが出てきて
「事前に連絡をもらわないと車いすでは乗れない」
と言われた。
仕方なく動物園はあきらめて、街中へ行こうと思ったら、
運よくこちらはノンステップバスだった。
だが、障害当事者が、
「乗車時、怖いからスロープを出してほしい」
と言っているのに、運転手は
「スロープなんてないし、わしが危なくないように乗せる」
と無理やり乗せようとした。
実際バスにスロープは付いていたが、運転手はそれを知らず、
普段から車いすの乗客がいない様子だった。

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バス一つ乗るのに、これだけ困難が立ちはだかる状態。
バスでもっと出かけたいのに...健常者ならスルッと利用できるのが当たり前なのに...
みなさんが車いすユーザーならどうするでしょうか?



● 「地域生活 ずっとこの家で暮らしたかったのに」

愛着のある実家、住み慣れた地域。
ヘルパーを利用をして実家で一人暮らしをすることに
ずっと一緒に暮らしてきた母親も賛成だったのにもかかわらず、
母亡きあとも、ヘルパー利用により
そこに住み続けることが可能なのにもかかわらず、
別に暮らしてきた妹が、障害当事者本人の希望に反して
無理やり施設入所を決めてしまった
という内容。

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施設入所して安心安全なのは、誰なのか?
障害者だから仕方ない という世間一般の価値観に、考えなしに乗ってませんか?
その価値観の前では、一人の人としての意思を無視してもいいのでしょうか?




――― 午後 ―――

午後は、第2分科会にて
3つの報告と、パネルディスカッションに参加させていただきました。


● 報告1 : みきお物語

33歳まで自宅で母の介護で過ごしていたみきおさん。
自宅からも自室からもほとんど出ることのない毎日。
母の死を機に施設生活へ。
それまでの自宅での生活よりは良かったけど、
食事にも時間にも外出にも、厳しい制限が設けられている日々。
55歳で施設を出て、地域での自立生活開始。
今は、大好きなお刺身を食べたり、あちこち出かけたり、地域でいろんな人と出会ったりと
自由を満喫している。
このことを、いろんな人に伝えていきたい。

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物語り形式の中、ポイントごとに本人出演で、リアリティーのある寸劇をはさむ形でした。
重度訪問介護があまり実施されていない京都府北部(*注)では、みきおさんのような重度障害者が、そんなふうに地域で一人暮らしをすることは、なかなか思いつきもしないことかもしれません。
きっと、驚きをもって、多くの方々に深く伝わったのではと思います。
伝えられたい方、ご一報ください~

(*注)
重度訪問介護の実施がほぼゼロの市町村もある。
ちなみに、小規模自治体ゆえに財政が厳しくても、長時間介護を実施可能にする補助金制度 「重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業」 を利用している自治体は、府下26自治体のうち7つ。(亀岡市長岡京市京田辺市南丹市大山崎町、宇治田原町京丹波町。2016年6月現在)北限は京丹波町




(※ここから先の写真で、机に貼られている氏名と登壇者が
対応していない場合があります。)

● 報告2 : バリアフリー広め隊~福知山の街はバリアがいっぱい?~

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事前に福知山市バリアフリー度のチェックに赴き、
福知山駅周辺の商店街とスイーツ店を中心に報告しました。
事前予想では、失礼ながら、地方ですしバリアフリー度は低いのではと皆考えていました。
しかしその結果は、予想に反したものでした。
京都市の商店街の写真との比較もしたのですが、
全国からの観光客でにぎわう京都市の商店街でも
まだまだ入り口に段差のあるところがたくさんあるのに、
チェックした福知山の商店街やスイーツ店は
入り口フラットで入れるお店がたくさんありました。
ですが、車いすのお客さんは一人も見かけなかったですし、
店員さんに聞いても、車いすの人は稀とのことでした。
福知山市障害福祉課の方によると、
それだけフラットな理由は明確には分からないけれど、
バリアフリー重点整備地区に該当していることもあるかもしれないとのことでした。
興味のある方は、以下のスイーツマップなどを片手に、福知山の街を訪れてみてください。




● 報告3 : 私の自立生活

障害者の自立生活とはどういったものなのか?
重度身体障害者の私が、
なぜ、どうやって自立生活を始めたのか、その流れを
オカヤマがお話しさせていただきました。

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「障害者の自立生活」とは、具体的にどういう生活のことを言うのか?
「自立」 「生活」 両方ともごく一般的な単語であるからこそ、各々で想像し、みんな違ったイメージを持っているのではないでしょうか。障害福祉に縁のない人だけでなく、業界内でも、場合によっては解釈に食い違いがあるのではと思います。
私が今回用いた意味は、以下のJILのページに詳しい解説があります。
http://www.j-il.jp/about-rinen
このような、「障害者も地域で主体的に生活できる社会」が推し進められていくこと=差別解消が進むということですね。




● パネルディスカッション

ここまで、またまた例によって長ーくなってしまったので
個人的に印象に残った話を1つだけ。
京都市バスの乗務員の対応に、乗客の障害当事者が、怒りをあらわにした話。
パネラーのお一人が、
「乗務員の行った介助は間違ってはいなかったのに、なぜ?と思ったが
まあそういう風な(すぐ怒りの感情が出てしまう)障害者も存在しますよね」
という認識でした。
しかし、JCIL小泉としては、
「障害当事者からすると、
どうしてほしいのかを、まず最初に当事者本人に聞かずに、
乗務員が乗務員本位に動いてしまったからではないか」
という意見でした。

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これ、障害当事者からすると、重要ポイントですよね。私も、狭い場所で車いすの方向を変える時に、後ろのグリップを持って後輪を持ち上げると、頭が前へガクンと落ちることがあって危険なので、声かけ無しにやらないでほしいのですが、それをこちらから伝える間もなく、いきなりされることもあります。障害当事者が望む介助や配慮は、人によっては違う部分もたくさんあって、そこはまずは聞かないと分からないです。聞かずに介助側の思い込みでやってしまうと、危険だったり、障害者が、またはお互いに痛い思いをすることもあります。また、その人の意向をちゃんと確認しようとするということは、相手を一人の人として尊重するということだと思います。差別解消法は、そうやって障害当事者と周囲の双方が、対話をしていこうと言っている法律でもあると思います。




以上、2016年6月29日(水)第30回人権啓発京都府集会への参加報告でした。
福知山のバリアフリー調査報告の中で、JCIL下林から
「バリアが多くても、そんなもんだと、なんとなくスルーしているのは、健常者だけじゃなく、障害当事者にもそういう部分があるのでは?」
という意見がありました。これは、今回の他の報告にも言えることですね。
そのスルーは、無意識の当たり前か?それとも諦めか?
どちらにしても、スルーしないのが差別解消法の趣旨だと思います。
それが、たくさんの人に伝わっていればいいなと思います。
(オカヤマ)