【ご報告】第31回国際障害者年連続シンポ 相模原障害者殺傷事件 どう受け止め どう考えるか

2017年3月18日(土) 京都テルサ 大会議室 にて、

第31回 「国際障害者年連続」 シンポジウム
相模原障害者殺傷事件
どう受け止め どう考えるか

を開催しました。


イメージ 6










まず初めに、国際障害者年連続シンポジウム実行委員長の矢吹よりご挨拶。
その中で、
「31回目であり、36年の歴史があるシンポジウムだが、
その中でも今回のテーマは、個人的には、実はあまりやりたくないテーマで、残念だ」
との発言がありました。

多分同じように感じておられる方も多かったのではないでしょうか。

障害者差別がなくなることを、みんな長年、心から願って活動してきました。
にもかかわらず、差別意識を堂々と掲げた一人の人によって
多くの尊い命が失われ、傷つけられてしまいました。
そして、優生思想が今も社会にはびこり続けていることを、こんな形でまざまざと突きつけられています。
また、障害者を社会から排除しようとした加害者も、社会から排除されてきた経験があり、この事件によってまた彼も、社会から排除されようとしているという入れ子構造。

このような問題に向き合う時間でした。



■第一部(11:00-12:30)
「神奈川の現場より~亡くなられた方々のことと、現在の神奈川の動き~」

西角純志さん (津久井やまゆり園元職員、専修大学兼任講師)
第一部の最初は、やまゆり園元職員の西角純志さん。匿名の犠牲者が社会から忘れ去られるのを食い止めるため、彼・彼女らの生きた証を残そうとされています。西角さんが直接ケアをしたことのある男性7名を中心に、19名の犠牲者のことをおしえていただきました。また、歴史を含めてやまゆり園とその地域がどんなところか、園の建て替えか?地域移行か?今後を左右する各関係機関の動きなどを語っていただきました。

イメージ 5



















西角さんのお話しのあとは、神奈川新聞の取材(http://www.kanaloco.jp/article/207185)で明らかになった、19名のエピソードを一人ひとり読み上げ、会場の皆さんで黙とうをささげました。


ピープルファースト横浜 (知的障害者の当事者団体)
知的障害者の当事者団体であるピープルファースト横浜の小西勉さん。やまゆり園入所者の地域移行の実現に向けて、入所者自身の声をきいてほしいと要望活動をしていることをお話しいただきました。


同愛会 (入所施設やグループホームなどの運営法人)
同愛会の大川貴志さん。入所施設の運営法人ですが、他害行為などにより、地域移行が難しいとされているような方も地域で暮らせるよう、支援されています。入所施設では、支援する・されるという関係が一方的で、暴力的な関係だという自覚、一生暮らす場ではなく通過施設という目的を持つこと、そうやって有期限あること、これらの条件がないと、たくさんの虐待事件・事故がおきると、日々の実践を元にお話しいただきました。


次に、この事件を継続的に丁寧に取材されている、神奈川新聞の成田記者にも発言いただきました。
成田記者は、事件の背景には、社会の側で持っている差別や無関心がある。私たちははたして、差別や無関心について、どれだけ考えてきたのかということを強く考えていると話されました。



■第二部(13:30-15:00)
「事件についてそれぞれの思いを聴き、また語る時間」

イメージ 3

























イメージ 4




第二部では、様々な立場の方々に個々の思いを語っていただきました。

ピープルファースト京都の当事者5名 は、犯人の気持ちがわかるとか言われると、すごくつらい、私たちの気持ちをもっとわかってほしいと訴えました。

岡本晃明記者(京都新聞 は、非難される遺族の痛みが世間で見落とされがちなことや、匿名性が高まる社会で問題が公にならないジレンマをお話しいただきました。

平田義さん(重度心身障がい者通所施設シサム所長) は、重い障害のある人が社会に出てお互いが知っていく中で、差別していた人達の考えも変わっていく、言葉を発しない人の思いも、日々付き合っていく中で分かっていくと話されました。

佐々木和子さん(京都ダウン症児を育てる親の会) は、出生前診断は、障害があると診断された人の9割が中絶と、障害を理由に中絶するものになっており、これは、障害があると不幸になるからいないほうが良いという風潮のあらわれではないか。また、分離教育の政策そのものが、この事件を生みだしたと思うと話されました。

松波めぐみさん(大学非常勤講師) は、過去の優生保護法による強制不妊手術は、障害者は出産子育てをしない、どうせ何もわからないだろうという決めつけがあった。そのような障害者観は、今回の容疑者の言っていることと同じではないか。 優生保護法廃止後20年間、これだけの人権侵害が総括されないで来ていることは、大問題ではないかというお話しでした。

JCIL当事者3名 は、施設暮らしの経験と地域での今の生活を比較して、障害者が地域で生活できる社会をもっと推し進めていくことが重要だと訴えました。

猿渡達明さん(元相模原市民、脳性マヒ者の会一歩の会) は、私たちは、地域でたくさんの手を借りてここにいるだけですごい価値があるのだというメッセージを、障害当事者として一生懸命伝えてきたし、この問題に関連しても伝えていきたいと話されました。



■第三部(15:00-16:30)
「事件の背景や今後の課題について」

イメージ 2



第三部では、事件の背景や今後の課題を、専門家のお二人にお話しいただきました。

熊谷晋一郎さん(東京大学准教授・当事者研究
暴力というのがどういう時に起きるのかを、この一つの事件から説明するのではなく、研究結果から一般的に言えることを教えていただきました。加害者がリスクが高い人だと、すぐ排除しようとされるが、それでは解決しない。リスクが高いというのはニーズを持っているということであり、支援のための税金を、そこに集中的に投資すべきだとお話しされました。また、暴力の被害者側・加害者側のどちらからアプローチしても、いずれも条件をあらってみると、その人を排除している社会が原因と、私達全員を含めた社会の責任を強調されていました。


尾上浩二さん(DPI日本会議副議長)
メディアの多くと政府は、障害者村で起きた事件と捉えた。社会は何一つ問われることはない捉え方。問題が精神保健福祉法の見直しへ矮小化されているのもその延長。そして神奈川県の施設建て替えの意向。いずれも、社会から障害者を分離することをよしとする考え方だが、そうではなくインクルーシブな社会を作っていがなければならないと語られました。


イメージ 1













































上記の他にも、会場からたくさんの発言をいただき、ありがとうございました。
また、アンケートを書いてくださった方、ありがとうございました。複雑な思いや迷いを書いてくださった方が多数おられました。
当日は、約250名のご来場があり、それだけ多くの方々が問題意識をお持ちだったということだと思います。(予想を上回るご来場数で、席やスペースが不十分であったことをおわび申し上げます。)
このシンポジウムは、何か結論を出すという趣旨ではありませんでしたが、相模原殺傷事件に関する様々な問題、いろんな立場の人々の思いを、たくさんの方々と共有できたのではないでしょうか。
このテーマについて、ここから先は、シンポジウム参加者に多かったであろう福祉関連の皆さんの中だけでとどめずに、もっと広く、世間一般で身近に捉えてもらえるよう、皆さんの発信や活動にも期待しています。私たちも、これからもずっと考え、行動し続けたいと思います。



「変わるべきは社会」 京都で相模原殺傷事件考えるシンポ
2017.03.18 京都新聞


相模原殺傷事件 障害者や元職員 考えるシンポ
2017.03.19 朝日新聞


〈時代の正体〉 誰もが排除されない社会とは  相模原障害者殺傷事件考
2017.04.12 神奈川新聞
今回のシンポの内容を大変詳しく書いていただいています。途中まで無料で読めます。


検証 相模原殺傷事件 識者に聞く 障害者が身近な社会に
2017.01.27 京都新聞